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板金鎧の歴史


 板金鎧の歴史は、炉と銃器の発達と共にあります。
上質な鋼鉄を自由に加工できるようになるにつれ板金鎧の製作は容易となり、銃器に抵抗できる唯一の防具である板金鎧は、その威力に対抗するために試行錯誤が繰り返されたからです。

 とはいうものの、ライフル登場以前の銃器は実は精度も威力もには敵いませんでした。
生産の容易性と、訓練をあまり必要としないという利点があり、これによりパイク兵の槍ぶすまさながらに並び、「下手な鉄砲を数撃って」使っていたわけです。
銃弾はなので基本的に鋼鉄製の鎧は貫けないのですが、至近距離で用いれば話は別でした。

 ですので実のところ、板金鎧の本当の天敵は、特にクロスボウだったりします。
余談ですが、当時世界で最も銃を保有し使用していたのは日本です。

時期
紀元前〜ブレストプレート 
10世紀頃〜スケイルメイル?(※1)
ラメラーアーマー?(※1)
 
14世紀

 
 
木炭高炉
15世紀
マッチロック(火縄)銃

 
 
 
16世紀
ハーフアーマー
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コークス高炉
マスケット銃(※2)
 
 
17世紀
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フリントロック(火打)銃
 
バヨネット(銃剣)
18世紀
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ライフル(施条銃)(※3)
 
※1初期の板金鎧は、「チェインメイルの上から金属板で補強した鎧」という記述で紹介されます。
スケイルメイルラメラーアーマーが正式に登場したのが同時期ですので、恐らくこのことを指しているものだと判断して掲載してあります。
※2「マスケット銃」とは本来、1,520年頃スペインで開発された、重量9kgで20mm口径の長銃を言うのですが、一般には滑腔(銃身の内側に溝がない)の火縄、および火打式の長銃の総称として使われます。
つまり、ライフルより前の長銃全般を指します。
※3銃身の内側に螺旋状の溝がある銃で、施条銃と呼ばれます。
銃身の長さは関係なく、現在ある銃は散弾銃などの一部を除いてほぼ全てがライフルです。
この溝により、それまでの銃器と比べて格段に精度と威力が増し、以下の代物でしかなかった銃は、一躍戦場の主役となります。
  
鉄の種類(炭素の含有量により3種類)
 炭素
含有量
硬度展性融点
錬鉄:Wrought iron
(鍛鉄
軟鉄
:Mild steel)
※工業用純鉄
脆い粘る
鋼鉄:Steel適度適度
銑鉄:Pig iron
(鋳鉄:Cast iron)
硬い脆い
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 14世紀に登場した木炭高炉は、鉄の歴史に大きな変革をもたらしました。
それまでのレン炉では日産10kgのを作り出すのがやっとだったのですが、木炭高炉では日産1tという、まさに桁違いの生産能力を可能にしました。

 鋼鉄の精製が可能になるのは19世紀以降なのですが、それ以前でも、少量ながら鋼鉄を得ることは可能でした。
鉱石の成分の違いにより稀に精製されるものや、錬鉄(低炭素)を炭火で焼いて、ハンマーで叩いて鋼化する「滲炭法」などがそうです。
 刀剣では滲炭法が有用ですが、鎧となると材料としての鋼鉄が重要となります。
鉱石の質という確率に頼っていた当時において、生産量の増大はそのまま鋼鉄の大量生産に繋がるものでした。
なお、チェインメイルに使われていたのは鋼鉄ではなく軟鉄です。


板金鎧の終わり


 ごく短期間に驚異的な発展を遂げた板金鎧ですが、ライフルの登場によってその存在価値は皆無となり、またたく間に戦場から姿を消していきます。
鎧を着ていてもいなくても弾が当たれば貫通するわけですから、わざわざ動きを制限するくらいなら着ない方が良いというわけです。