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黒金(/)/アイアン
Iron(英)/Fer(仏)/Ferro(伊)/Eisen(独)
鋼鉄刃金/スチール
Steel(英)/Acier(仏)/Acciaio(伊)/Stahl(独)
玉鋼(極少量精製される最上級の)
Tamahagane(日)
ダマスカス鋼/ウーツ鋼
Damascus Steel(英)/Acier de Damas(仏)/Acciaio Damasco(伊)/Damaszener Stahl(独)
Wootz Steel(英)/Wootz(仏)/Acciaio Wootz(伊)/Wootz(独)

 地球上に最も多く存在する、人間にとって最も身近な金属。
加工が比較的容易で、適度な強度を持つ上鋭利にすることもできるため、武具の材料として適していました。
そのためどれだけ多くの鉄を確保できるかどうかが、古代世界のパワーバランスのでもありました。
今日でも、鉄は様々な用途において使用されています。

 「Iron」および「Eisen」はインド・ヨーロッパ祖語で「血」を意味する「Ésh₂r」(正しくは「Ésh₂r̥」)より。
そこからケルト祖語「Eisarno」などを経て古英語「Īsen」(その後「Īren」→「Iron」)などに派生。
Fer」および「Ferro」はラテン語で「強固な」を意味する「Firmus」より。
Steel」および「Stahl」はインド・ヨーロッパ祖語で「硬さを留めること」を意味する「Stak-」より。
Acier」および「Acciaio」はラテン語で「鋭い」を意味する「Acies」より。

炭素の含有量による鉄の種類
呼称炭素硬度展性融点補記
純鉄Pure Iron〜0.02%軟らかい粘る1,535℃ 
錬鉄Wrought Iron〜0.1%軟らかい 粘る1,530℃鍛鉄可鍛鉄」(鍛えることのできる加工前の鉄)とも。
軟鉄Mild Steel〜0.3%軟らかい粘る1,480℃中世で一般的に用いられていた鉄(加工後)。
鋼鉄Steel〜2.0%適度適度1,400℃1.6%で強度最大(ウーツ鋼/ダマスカス鋼)。
銑鉄Pig Iron〜5.0%硬い脆い1,200℃ケイ素を1.0〜3.0%含むと「鋳鉄(Cast Iron)」。

製鉄の歴史
発祥時期と地域手法補記
紀元前4,000年頃
シュメールのウル(現イラク)
隕鉄を直接叩いて加工隕鉄の採取は偶然性が高いため、儀式用の高価な装飾品に。より高価。
当時のシュメールの言葉で鉄は「Anbar(天の金属)」。
紀元前1,600年頃
ヒッタイト帝国(現トルコ)
自然送風やフイゴで800度まで加熱し
発生した一酸化炭素で酸化鉄を還元する
ヒッタイト崩壊の紀元前1,200年以降にアッシリアを経由してオリエントやヨーロッパ各地に。
アッシリアが先に製鉄技術を持っていたという説もあり。
紀元前5世紀頃
中国
水車で送風して1,200度まで上げる
爆風炉
中国のみで用いられた技術。
炭素を含んだ銑鉄であればこの温度で溶融できる。
紀元前300年頃
インド
(不明)最強の鋼、ダマスカス鋼(ウーツ鋼)の開発(時期については諸説あり)。
以後1,700年頃まで製造され、その後製法が失われる。
4世紀頃
北魏(中国)
木炭に代わりコークスを用いるコークスとは石炭から硫黄などを抜いたもの。
木炭や石炭の炉よりも高度な炉が必要となる。以後中国のスタンダード。
15世紀
ジーゲルランド(ドイツ)
水車で送風して1,200度まで上げる
「木炭高炉
西洋での初の溶鉱炉。大量の木材を必要とし、森林伐採が深刻化。
広大な森林を有する国ほど鉄資源で優位に
後に石炭が用いられるものの、硫黄を含む問題が。日産1トン。
1,678年
イギリス
燃焼室と精錬を行う炉床が別の炉
「反射炉」
不純物を除去できるので石炭をそのまま使用できる
1,709年開発/1,735年操業
イギリス
木炭に代わりコークスを用いる
高炉
1,620年頃にダッド・ダドリーが開発した西洋初のコークスを使用した実用炉。
蒸気機関使用。日産4.5トン。
1,783年
イギリス
燃焼室と精錬を行う炉床が別の炉
「パドル法」
反射炉で溶融した鋳鉄撹拌(パドル)することで炭素を除去するもの。
炭素を除去すると融点が上がり、固まった錬鉄が得られる。
現在も鉄以外では現役の方式。時産7トン。
1,856年
イギリス
回転するコップのような形をした炉
「ベッセマー転炉
鋼を大量生産できる初めての炉。時産50トン。
リンや硫黄が少なく、ケイ素が多い鉄鉱石しか使用できない。
1,878年
イギリス
 〃
「トーマス転炉
ベッセマー転炉の内張りを酸性酸化物から塩基性酸化物に変えたもの。
リンや硫黄が多く、ケイ素が少ない鉄鉱石しか使用できない。
1,856年考案/1,864年確立
イギリス/フランス
反射炉の平型炉
平炉
銑鉄屑鉄と燃料で不純物を除去できる炉。
これによりどんな鉄鉱石でも使用可に。現在も一部地域で使用。
1,948年スイス
1,970年代アメリカ
1,980年代
「純酸素上吹転炉(LD転炉)」
「純酸素底吹転炉
「純酸素上底吹転炉
上から酸素ガスを吹き付けて加熱する。
下から酸素ガスを注入し、加熱と撹拌を行う。故障多し。
上から酸素ガスを吹き付け、下から不活性ガスで撹拌する。現在の主流。