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蒸気機関
Steam Engine(英)/Machine à Vapeur(仏)/Motore a Vapore(伊)/Dampfmaschine(独)

 加熱した水の膨張と収縮(水蒸気への気化と液化)を利用したエンジン。
一般に蒸気機関というと、その中でも石炭を用いた往復動型(※2)の外燃機関(※3)を指して用います。
古くはアレクサンドリアのヘロン(10〜70年頃、古代ローマ属州エジプト)によるものが記録に残っていますが、実用化に至ったのは産業革命(18世紀後半〜19世紀初頭)の折で、製鉄炉の発展と併せてその火付け役となったものの1つ。
※1シリンダー水を入れる容器。針をなくした注射器のような形の、その筒の部分。
ピストン膨張と収縮で動かす密閉されたと棒。同注射器の押子の部分。
※2往復動型シリンダーとピストン(※1)を用いる動作機構。注射器の押子が往復するようなイメージ。
タービン型噴出力でプロペラを回す動作機構。
※3外燃機関外からシリンダーを加熱し中の水を膨張させ、何らかの方法での冷却とを繰り返しピストンを動かす。
内燃機関シリンダー内で爆発を起こし、その爆発と収縮でピストンを動かす。
例:
 往復動型タービン型
外燃機関蒸気機関など発電所など
内燃機関一般的なエンジンジェットエンジン

 人類の発展を促したこの蒸気機関でしたが、石炭と水と使用に耐え得る丈夫な装置が必要となるためどうしても重く大きくなる上、かつ最大でも10%(※)というエネルギー効率の悪さから運搬すべき石炭の多くを消費してしまうなどの諸問題を解決できず、その後台頭する石油や電気による機関に次第に置き換えられていきました。
石油や電気による機関が台頭した当時で。
最新のスターリング機関では25〜35%のエネルギー効率。

蒸気機関の歴史
発祥時期と地域と開発者呼称馬力(※)補記
紀元前1世紀末頃
アレクサンドリア
ヘーローン・ホ・アレクサンドレウス
ヘロンの蒸気機関
/アイオロスの球
 空洞の鉄球の両端に、直角に曲がった鉄製のストロー(噴射口)を取り付けたような形状をした蒸気機関。横から見て「§」のような形状。
この手前と奥にも同様のストローを取り付け、その中に熱された蒸気を通すことで鉄球が回転する仕組み。原始的な蒸気タービン。
1,688年
イギリス
ドニ・パパン
パパンの蒸気機関 水を加熱してピストンを押し上げ、その後水をかけて冷却、大気圧でピストンを押し下げる(自然に落ちるのを待つ)。
自動ではない上往復に時間もかかるため実用化には至らなかったが、その後の蒸気機関の研究の祖となる。
1,698年
イギリス
トマス・セイヴァリ
セイヴァリ機関
の機関
1水蒸気が冷えて収縮する時の力でポンプを動かし水を吸い上げる蒸気機関。
現代の家庭用手動石油ポンプと原理的には同じ。蒸気機関としては異質な構造。
採掘の現場で実用化されたものの、爆発事故が多く何万人もの鉱夫が犠牲に。
1,712年
イギリス
トマス・ニューコメン
ニューコメンの蒸気機関5〜10冷却水を自動でかける点と、ピストンを押し下げる動作も蒸気で行うように改良。事実上、実用性のある世界初の蒸気機関
ピストンはシーソー型の装置に連結され、その上下の往復運動で鉱山内の水を汲み出す。
1,769年
イギリス
ジェームズ・ワット
ワットの蒸気機関10〜50ニューコメンの蒸気機関を修理した際にその機能を改良。それまでシリンダー自体を熱して冷やしてとしていたのを蒸気を別所で冷やすことで必要な燃料が1/4に。
更にその後往復運動を回転運動に変換することに成功し、それまで収縮の力のみでポンプを動かしていたのを膨張の力も使えるように。
これにより動力は馬から蒸気機関へ移行。出力を表す「馬力」の単位はこの際に考案。実質的な産業革命の始まり
1,800年〜
イギリス
リチャード・トレビシックら
高圧蒸気機関100ワットの蒸気機関の特許が失効したことを受けそれまでの蒸気機関を改良。高圧蒸気を利用することで大きさがそれまでの1/5に。
1,783年に試験運航が行われた蒸気船が1,807年に実用化
1,804年に発明された蒸気機関車が1,825年に完成、1,830年から運行を開始。
蒸気自動車も1,769年に試作されたものの、重量や燃料供給などの問題がありお蔵入り。
1,823年
イギリス
サミュエル・ブラウン
(ガス真空機関)4実用になった世界初の内燃機関。小型化を求められた自動車に。
構造は従来の蒸気機関のものを借用。燃料はガスを使用。
1,858年
ベルギー
ジャン=ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアール
(ルノアールエンジン)252大量生産された世界初の内燃機関。燃料はガスを使用。
この時点では2ストローク式と出力を抑えたものながら、蒸気機関より大きな出力を誇る。
それまで大きな蒸気機関を導入できずにいた小さな工場から順次普及
1,870年〜
ウィーンほか
ジークフリート・マルクスほか
(ガソリンエンジン)4〜5世界初のガソリンエンジン。以後自動車はガソリンの時代に
1,876年にはドイツのニコラウス・オットーが実用的な4ストロークガソリンエンジンを開発。
1,878年にはスコットランドのデュガルド・クラークがそのライバルとなる2ストロークエンジンを開発。
1,879年にはドイツのカール・ベンツがオットーのエンジンを元に安定性を向上。
1,879年
ベルリン
ヴェルナー・フォン・ジーメンス
(電気機関車)3乗客を乗せた世界初の電気機関車(電車)。1,881年には路面電車として開業。
蒸気機関で発電した電気を用いるので一見無駄なように見えるものの、石炭を積み込まなくて良いのでその分軽くなる上、代わりに他の荷物を積み込めるので効率的。
蒸気機関車のように排煙を出さないということで1,890年にはイギリスの地下鉄でも採用。
同時期より地上の鉄道でも短い路線から順次採用されていったものの、引き続き蒸気機関車が利用される例が多く移行緩やかに行われた。
1,884年
イギリス
チャールズ・アルジャーノン・パーソンズ
(蒸気タービン)2,000蒸気の力でプロペラを回す。基本的な原理はヘロンの蒸気機関に同じ。
1,897年に世界初の蒸気タービン船「タービニア」が建造され、蒸気機関最後のであった蒸気船が置き換えられることで、以後それまでの蒸気機関は急速に姿を消していく
馬の仕事量を基に作られた単位。
その基準でまず英馬力が策定されたが、現在はメートル法に置き換えられた仏馬力が公式。
一方日本ではその仏馬力をきりの良いワット数に丸めた日本馬力が使われる。
ただ現代では「ワット」が主であり、例えるなら「km2」に対する「東京ドーム○個分」のような直感的な単位として残っている。
なおその単位「ワット」は表中のジェームズ・ワットが由来。

英馬力(HP)…550ポンドの荷物を1秒間にnフィート動かす仕事量(1馬力=745.69987158227022ワット)。
仏馬力(PS)…75kgの荷物を1秒間にnメートル動かす仕事量(1馬力=735.49875ワット)。
日本馬力……1馬力=735.5ワット。