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水銀(/)
Mercury(英)/Quicksilver(英)/Mercure(仏)/Mercurio(伊)/Quecksilber(独)

 常温常圧下において唯一液体となる純金属。
その神秘性、および化学的性質の特異さゆえ、古くから医療分野や錬金術などの素材として用いられてきました。
特に鉱石である辰砂(硫化水銀)は鮮血色をしていることもあり、古代中国では不老不死の薬として用いられました(錬丹術)。

 錬金術において水銀は硫黄との配合によってあらゆる金属を製造できると考えられており、その硫黄と水銀との化合物である先述の辰砂こそが賢者の石ではないかという見方もあります。
実際に辰砂を用いてやその他の純金属を生成することはできませんが、水銀合金(アマルガム)を用いて金めっきを施すことは可能です。
これは水銀がを含む多くの金属と合金となることと、沸点が低い(356.7℃)ためそこから水銀だけを除去することが容易であるという性質に拠ります。

 水銀は紀元前1,500年頃のエジプトの墓に納められていたものが記録上の最古で、紀元前500年頃には水銀合金が作られていたことが確認されています。
毒性が認識されたのは中世以降で、それまでの間多くの犠牲者を出すことになります。
一説には中国の始皇帝死因も、この水銀を服用していたためではないかと言われています。

 語「水銀」は古代ギリシア語で「水の」を意味する「ὑδράργυρος(ラテン転記「Hydrargyrum」)」より。
Mercury」は占星術錬金術 において惑星名を金属につける習慣があり、Mercury(水星)は地球から見てせわしなく動いて見える天体であることから。
Quicksilver」はラテン語で「生きている」を意味する「Argentum Vivum」より。

 英語圏ではMercuryQuicksilverの2つの語が用いられますが、前者は主に科学の分野や形式ばった場面での正式名として。後者は古い言葉で詞的な表現とされますが、もっぱら一般にはこちらの語が用いられます。