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アンオブタニウム
Unobtainium(英)

 「Un-(否定(※))」+「Obtainable(入手できる)」+「-ium(金属元素)」で、「手に入れることのできない金属」の意。
1,950年代後半の宇宙工学において用いられた語で、宇宙船の材料としての条件を満たすほどの高強度、(大気圏突入可能な)高耐熱、耐放射線性、極軽量の金属を指す言葉。
その意味から伺えるように、そういった条件を満たす未知の合金等を仮定したものというよりは、「そんなものは実在しない」という揶揄を込めて作られた語です。
なお「Impossibrium」「Hardtofindium」など同種の語が他にも多数ありますが、あまり一般的ではありません。
名称未定元素に用いられるギリシア語の数詞「1」とかけたダブルミーニング。

 その後条件を満たす素材が実際に作られるようになり、語「アンオブタニウム」は上記条件を満たす「入手不可能な金属」から「入手困難な金属」の意味に置き換えられ、特にその主たる金属であるチタンの代名詞として用いられることが多くなります。
その「チタン(Titanium)」に倣い、「Unobtanium」と「i」を抜いて綴られることもあります。

 語「アンオブタニウム」はその後他の分野でも用いられ、上記同様「指定の条件を満たす未知の素材」または「入手困難な有用な素材」として扱われます。
例えば機械産業では希土類元素、特にテルビウム、エルビウム、ジスプロシウム(※1)、イットリウム、ネオジムを指す言葉として。
宇宙エレベーター開発研究者らの間では、それを実現するための未知の素材(※2)を指す言葉として、それぞれ使われています。
※1奇しくもギリシア語で「近づき難い」「入手するのが難しい」を意味する「Dysprositos」が語源。
※2カーボンナノチューブ製ケーブルをそう呼ぼうとする動きあり。

 またこれらとは別に、アメリカのオークリー社(Oakley,Inc.)が1,975年に開発した素材として「Unobtainium®」というものがあります。
これは-iumとありますが金属ではなくゴム素材で、汗を吸収するほどグリップ力が増すという性質を持ちます。


 創作物ではやはりSFに登場するのが一般的ですが、中世風ファンタジーに登場する例もないことはありません。
具体的な性質は作品によって異なり、単に名前を借用しただけのオリジナルの素材であるとも言えます。
にも関わらず独自の命名を差し置いてこの語が使われる場合は、「未知の」「未解明の」「よく分からない」といったニュアンスが暗に含まれるようです。

 アンオブタニウムが登場する代表的な作品としては、『ザ・コア(The Core)』(2,003年アメリカ)、『アバター(Avatar)』(2,009年アメリカ)が挙げられます。
前者はタングステンとチタンの合金で、と圧力をエネルギーに変換する性質(※1)を持ち、更にそのエネルギーによって強度を高めることのできる金属として。
後者は高エネルギー(※2)と強力な磁場を持つ金属として、それぞれ登場します。
※1あたかも太陽光電気に変換するソーラーパネルのように。
※2例えば核燃料や水素吸蔵合金のような。