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錫/スズ(/青金(工芸用語)) Tin(英)/Étain(仏)/Stagno(伊)/Zinn(独) |
複数の同素体(※)を持つ金属で、良く知られるのは常温安定のβスズ(銀白色)と、低温安定のαスズ(灰色)。
一般に使用されるβスズは非常に柔らかく(硬度1.5)低融点(232℃)で、その加工の
容易性から古代から人間に利用されてきた金属の1つ。
※ | 炭とダイヤのように、同じ原子の塊でもその構造の違いで別の物質のようになるもの。 |
古代においての
錫は合金としての利用が主で、
銅との合金である
青銅、
鉛との合金であるはんだなどが挙げられます。
錫は産出地に偏りがあり、
錫が採れるかどうかがイコール
青銅を作れるかどうかでありました。
ヨーロッパにおける
錫の一大産出地はイギリスであり、ローマ帝国占領時代にこれが持ち出され、その文明の発展に大きく貢献しました。
その他では「ピューター(
Pewter(英)、
白鑞/
白目)」と呼ばれる
錫(90%以上)と
鉛の合金が食器などに用いられていましたが、これが特に重用されるようになるのは中世期にて。
高価な
銀の食器の代わりとして採用されましたが後にその
毒性が指摘され、
鉛をアンチモンに置き換えた「ブリタニアメタル」が18世紀にイギリスで開発され以後それが主流となります。
しかしそれも低融点という弱点を克服したアルミ製の食器が作られるようになると、一般用途からは姿を消していきました。
現在の用途としてはその加工の
容易性からハンドメイドのクラフト素材としてが良く知られ、その他ではかつての玩具や缶詰などに用いられていたブリキ(
錫メッキ
鋼)など。
変形させる際に「スズ鳴き」というパキパキといった音が鳴るのが特徴で、語「スズ」も「鈴の音」から来ていると言われます。
一方漢字の「
錫」は「加工が
容易な金属」を意味し、同じ字が「
錫杖」の「しゃく」に用いられていますが、これは音が鳴ることから充てられたもの。
元素記号「Sn」や英語の「
Tin」、イタリア語の「
Stagno」などはラテン語で「
銀と
鉛の合金」を意味する「
Stannum」より。
銀鉱石を加熱すると一番最初に
鉛が溶け出してくることと、
錫の低融点という特徴からこれらが混同されたのではとも言われますが詳細は不明。