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アルマス/アルマツィア
Almace(仏)/Almace(英)/Almacia(古ノルド)/Almice(独)

 『ローランの歌』に登場する、ランスの大司教チュルパン(Turpin)の剣。
チュルパンはシャルルマーニュ大帝(Charlemagne)に仕える騎士の1人で、パラディンに数えられる場合と数えられない場合とがあります。

 アルマスは「磨き抜かれた鋼鉄」の剣で、瀕死の重傷を負いながらなお敵に千回斬りつけた剣として『ローランの歌』には記されています。
日本語訳では「氷の刃」と紹介されているものもありますが、これは「氷のように冷たく研ぎ澄まされた刃」の例えで使われる古い表現で、言葉通りの意味ではありません。

 『ローランの歌』では上述のみの登場ですが、北欧伝承の1つ『カルル大王のサガ(Karlamagnus Saga)』では、「アルマツィア」としてその出自が記されています。
アルマツィアはイギリスの鍛冶師ガラント(Galant=ドワーフのウェランド?(Weland))が7年がかりで鍛えた3本の名剣のうちの1本で、切れ味の鋭い順に「デュルムダリ(Dyrumdali=デュランダル)」「アルマツィア(Almacia=アルマス)」「クルト(Kurt=慈悲の剣カーテナ(Curtana))」と名づけられました。
試し切りは鋼の山を用いて行われ、それぞれ15cm、10cm、10cm(刃こぼれあり)の深さまで切り裂きました。

 剣の変遷は以下の通り(カルル大王までは3本セット)。
鍛冶師ガラント─(献上)→ファーベル王(Faber)─(借金のかた)→金貸しマラキン(Malakin)─(兄弟の釈放)→カルル大王(Karlamagnus=シャルルマーニュ大帝)→トゥルピン(Turpin=チュルパン)」
一方デュルムダリはのロラント(Roland=ローラン)に、クルトはオッドゲイル(Oddgeir=パラディンの1人デーン王子オジエ(Ogier))に譲り渡されました。

 アルマスの明確な語源は不明で、古ノルド語で「施し」を意味する「Almusa」、ラテン語で「慈悲」を意味する「Elemosine」、アラビア語で「ダイヤモンド」を意味する「Almas」などが候補として挙げられています。