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ベオウルフ/ベーオウルフ
Beowulf(古英)

 北欧の英雄叙事詩。現存する写本がイギリスで書かれた1冊のみであるため、イギリス文学とも。
物語の舞台となっているのは500年頃のスウェーデン南部とデンマークの島国(エーレスンド海峡(Öresund(ス)/Øresund(デ)、オアスン海峡とも)を挟んだそれぞれの土地)。
物語自体は架空ですが、当時の実在の人物らが借用されて物語に登場します。

 成立時期は不明で、6〜8世紀、8〜9世紀など諸説。なお写本については10世紀に著されたもの。
写本には後付けでキリスト教思想が盛り込まれた跡があることから、私見ではありますが、彼らアングロ・サクソン人がキリスト教化していった7世紀中頃(※)以前には既にあったのではないかと思われます。
アングロ・サクソン人がイングランドに侵攻、七王国を立ち上げた後、その七王国の1つであるノーザンブリア王オズワルドがリンディスファーン修道院創建したのが635年。

 物語は50年の時を挟んで前半と後半に分かれています。
前半では勇士ベオウルフが隣国(現デンマーク)の巨人(または竜)グレンデルを退治。
後半では王となったベオウルフがドラゴンと刺し違えて命を落とし、幕を閉じます。

系図と他主要登場人物
  【ウェデル族】             【デーン族】
    フレーゼル             フロースガール
      │                (主君)
  ┌───┼─┬─┐              ↑
  │   │ │ │【シルヴィング族】  ┌──┴──┐
ヒゲラーク ♂ ♂ ♀〒エッジセーオウ   ↓     ↓
 (主君)      │        (顧問)   (家臣)
  ↑        │        アシュヘレ ウンフェルス
  └─→(家臣)ベオウルフ
          (主君)
           ↑
           ↓
          (家臣)
         ウィーラーフ

 デーン王フロースガールはヘオロット(牡鹿館)を建造し、連日宴席を開きました。
するとその騒ぎに怒った巨人グレンデルがヘオロットを襲い、毎夜家臣を殺していきます。
この事件を聞きつけたウェデル族の勇士ベオウルフは、部下を率いてこれに参戦。素手のグレンデルに自らもまた素手で挑み、その片腕をもぎ取ります。

 グレンデルが死んだと思い込んだ人々は宴を開きますが、そんな中負傷したグレンデルの母親が、復讐のためヘオロットに侵入します。
魔女はであるベオウルフを見つけることはできませんでしたが、代わりにフロースガール王の顧問のアシュヘレを攫って(殺して)逃走します。

 フロースガール王はベオウルフやウンフェルスら家臣を連れて魔女の棲むへ赴きます。
戦いを挑んだベオウルフは水底に引きずり込まれてしまいますが、魔女の館にあった巨人の剣で応戦、無事グレンデル母子を討ち取ります。

 やがて50年の時が経ち、ベオウルフは王として国を治めていました。
そんな中、ある男が主君の信頼を取り戻そうとドラゴンの宝に手をつけたことにより、怒ったドラゴンが国中を荒らしまわるようになりました。

 ベオウルフは名剣ネイリングと特注のの盾を携えてドラゴン討伐に向かいますが、部下たちは恐れを成し、ついてきたのはウィーラーフただ1人。
ベオウルフはウィーラーフの助けを借りてドラゴン討伐を成し遂げますが、自らもまたその命を落としてしまいます。

 ウィーラーフは遺言に従って王の亡骸埋葬し、ドラゴンの宝もまたこの埋葬され、ベオウルフの物語は幕を閉じます。