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ゾロアスター教/拝火教
Zoroastrianism(英)/Zoroastrisme(仏)/Zoroastrismo(伊)/Zoroastrismus(独)

 アーリア人の間で信仰されてきた自然崇拝(ペルシア神話/イラン神話)の神々の中から、アフラ・マズダ(Ahura Mazda(古ペルシア))を最高神として定めて体系化した宗教。
そのアフラ・マズダ率いる善神の軍団と、魔王アンラ・マンユ(Angra Mainyu(古ペルシア))率いる悪神の軍団の戦いを背景とした、善悪二元論基調としています。

 成立時期は紀元前1,000年前後数百年の間と見られており、開祖はゾロアスター(Zoroaster(希英)/Zarathustra(古ペルシア独英))とされています。
ゾロアスター教は最高神を定めた世界初の宗教と見られており、現存する中ではヒンドゥー教と並んで世界最古の体系的宗教とされます。
そんなゾロアスター教の概念は、後発となるユダヤ教キリスト教イスラム教に多大な影響を与えました(後述)。
なおゾロアスター教ではを善()の象徴であると見なし、神殿に拝火壇を設けることから「拝火教」とも呼ばれます。

 アンラ・マンユと出遭ったアフラ・マズダは世界を作り、互いの力と信奉する者らの行いによって、世界が楽園と地獄のどちらに傾くかで勝負をすることにしました。
この善悪入り乱れる混沌の世界がすなわち今ある人間界ですが、この勝負自体は最終的にアフラ・マズダが勝利することが約束されています。
 なおアフラ・マズダを信奉善行を積んだ者は天国へ、アンラ・マンユを信奉悪行を積んだ者は地獄へと一時的に送られ、勝負が決した後は敗者側は消滅、勝者側は新たな世界で永遠の生命を与えられるとされます。
後の宗教で一般的となる「天国」「地獄」の概念はここで生まれたとされ、また善人の楽園が与えられるとする一節はキリスト教の「千年王国」へと通じています。

 アフラ・マズダ勢には自らが創造した7人の上級神(アムシャ・スプンタ)と、それら以外の多くの下級神が。
アンラ・マンユ勢には5人の大悪魔と、三大女悪魔を筆頭とする多くの女悪魔がいるとされます。
アムシャ・スプンタは「七大天使」とも呼ばれ、これが後の天使の概念の基礎となっています。
なおアムシャ・スプンタを天使、その他の神々を精霊と見なした場合、ゾロアスター教は世界最古の一神教という見方をされる場合もあります。

 当時は前身であるペルシア神話と混同されながらも、歴代のペルシア皇帝たちが帰依したということもあり広く普及。
ササン朝(226年〜651年)の頃には、ペルシア帝国の国教と定められるに至りました。
その後も商人らの影響により各地に伝播していきましたが、後にササン朝ペルシアを滅ぼしたイスラム帝国によって、イスラム教へと塗り替えられていきました。