[トップ][もどる]
スキュラ
Skýlla(希)/Scylla(ラテン)/Scylla(英)/Scylla(仏)/Scilla(伊)/Skylla(独)

 ギリシア神話に登場する、6頭の犬の上半身と、大海蛇のような尾を下半身に持つ女性の怪物。
ホメーロスの『オデュッセイア(Odýsseia)』(紀元前8世紀)およびオウィディウスの『変身物語(Metamorphoseon)』(紀元前1世紀)に主に登場します。

 『変身物語』では、スキュラは元々美しいニンフであったとされます。
スキュラには多くの男たちが求婚し、海神グラウコス(Glaũkos(希))もその1人でした。
しかし他の男らと同様に断られたグラウコスは、魔女キルケー(Kírke(希))に媚薬を作るよう頼みます。
ところがグラウコスに惚れたキルケーはそれを拒み、それどころか彼に振られた腹いせにスキュラにを用います。
を注がれた水場に下半身を浸けたスキュラは、前述の姿を持つ怪物へと変貌を遂げました。

 『オデュッセイア』ではメッシーナ海峡(イタリアのつま先とシチリア島の間)に登場する怪物として描かれます。
『変身物語』のスキュラのその後ですが、執筆年はこちらの方が先。
なおこちらでは「長い首を持った6つの頭」と「12本の触手」を持つとされ、その頭はそれぞれ1人ずつ、計6人の船員を奪っていくとされます。

 メッシーナ海峡にはスキュラとカリュブディス(Khárybdis(希))という2体の怪物がおり、海峡を通る際にはこれらに気をつける必要がありました。
カリュブディスとは渦潮の怪物で、こちらは1日3回の食事の時間さえ避ければ特に問題はありませんでした。
しかしそちらにばかり注意を払っていると、スキュラに襲われてしまうというわけです。
このことを指して、「Between Scylla and Charybdis」という慣用句があります。
これは「前門の虎、後門の狼」と同義で、「進退窮まって」という意味で用いられます。

 このように恐れられたスキュラでしたが、その後は岩へとその姿を変えたとされます。
このスキュラ岩は、メッシーナ海峡に今なお現存します。