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ムシュフシュ/シラシュ
Mušḫuššu(アッカド)/Mušḫuš(シュメール)/Sirrush(英)

 メソポタミア神話(シュメール神話、バビロニア神話)に登場する合成獣。蛇がベースであることから、世界最古のドラゴンとも。
アッカド王朝(紀元前2,300〜1,900年頃)エシュヌンナ市の都市神の随獣で、エシュヌンナ市の支配者=都市神が変遷するに従い、主とする神を変えていった獣として知られます。
最終的にはバビロニア王国の最高神マルドゥク、およびその子ナブーの随獣として収まりました。
なお叙事詩『エヌマ・エリシュ』(紀元前18〜12世紀)ではマルドゥクと戦うため女神ティアマトによって作られた存在とされており、マルドゥクの勝利後その随獣となったとされます。

 姿形は時代により若干の変化が見られますが、最も有名なのはバビロン市のイシュタル門に描かれるもので、毒蛇ツノマムシの頭と胴体、ライオンの前肢、ワシの下肢、サソリの尾を持つとされるもの。
一見すると、四肢以外がウロコに覆われたキリンのようなシルエットとなります。
一方、ラガシュ王グデアに献上されたには翼を持つ姿で描かれており、こちらの方がよりドラゴンらしい風貌となります。

 「Mušḫuššu」は「Muš」が「蛇」、「Ḫuš」が「畏れ多い」「赤い」となり、「恐ろしい蛇」「怒れる蛇」などと訳されます。
また『古代オリエント集』では、「竜頭サソリ尾獣」という訳でも登場します。