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胡椒
Pepper(英)/Poivre(仏)/Pepe(伊)/Pfeffer(独)

 インドを原産とするコショウ科のつる性植物。およびその果実を加工した香辛料。
語源はコショウと混同されていた「ヒハツ(長コショウ)」を意味するサンスクリット語の「Pippali」より。一方日本語(中国語)の「胡椒」は「胡(西方)の香辛料(椒)」の意。
 単に「Pepper」と言った場合はこのコショウを指しますが、他にも「トウガラシ(Chili Pepper)」や「ピーマン(Bell Pepper)」、「サンショウ(Japanese Pepper)」や「ペパーミント(Peppermint)」などにも語が用いられるので、「Black Pepper(黒コショウ)」「White Pepper(白コショウ)」などと呼ぶのが適当です。

 本記事ではこの「コショウ」について説明します。

 コショウは紀元前2,000年頃には既にインドの食卓で用いられていたことが確認されており、古代エジプト国王ラムセス2世の遺体に詰められていることからその没年である紀元前1,213年より以前には交易が行われていたと見られます。
文献に登場するのは紀元前4世紀初めのギリシアの『博物誌』で、一部の富裕層のみが手にしていたことが伺えます。
紀元前30年にローマ帝国がエジプトを征服したことでコショウの販路が開けますが、当時一番安かった黒コショウでも2,015年換算で500gあたり3,000円相当となり、現在のおよそ倍程度。
なお白コショウは5,000円、コショウの未成熟体と思われていたヒハツは1万円とより高価。

 大航海時代にはコショウ1粒が黄金1粒と同じ価値だったという話がありますが、これは目方で取引が行われていたことから尾ひれがついた言葉のようで、例えば16世紀イギリスの場合金貨1枚(8g)あたりで1,885gが購入でき、これは砂糖の1/5の価格となります。
それでも庶民には高価な調味料であったことは間違いなく、また当時は保存技術の都合から臭みのある肉を食さなければならなかった都合上、その臭みを誤魔化せるコショウは高い人気を誇りました。

 ヒハツの方が風味が強くその分人気もありましたが、高価かつ安定的に手に入らなかったことなどから利用が離れ、14世紀にはほぼコショウのみが用いられるようになりました。
なお別の植物だと認知されたのはそれより後の16世紀、ポルトガルのガルシア・デ・オルタ(Garcia de Orta、1,501〜1,588)の指摘にて。

コショウの種類とその大な代替類似品
名称主な用途概要
青コショウ
Green Pepper(※1)
肉、魚
そのまま
未成熟の緑色の実を、酢、真空パックなど何らかの方法で保ったもの。
黒コショウ
Black Pepper
牛肉未成熟の緑色の実を黒くなるまで乾燥させたもの。
最もポピュラーで現在世界中で用いられている。
赤コショウ
Orange Pepper
Red Pepper(※2)
高級な上記完熟した赤い実を乾燥させたもの。
または、酢、真空パックなど何らかの方法で色彩を保ったもの。
白コショウ
White Pepper
完熟した赤い実を乾燥させた後、水で外皮を剥いだもの。
流水だと問題ないが、浸け置きすると腐敗によるインドール(糞便臭)が問題に。
ピンクペッパー(※3)
Pink Pepper
代替品コショウボクという良く似た植物を加工したもの。
ヒハツ/長コショウ
Long Pepper
高級品本文参照。
ヒハツモドキ
Javanese Long Pepper
ジャワナガコショウ
Balinese Long Pepper
香辛料
そのまま
沖縄を含む東南アジアで食される、ヒハツに良く似る植物。
沖縄では「ピパーチ」などと呼ばれる。
這ゴショウ
Wild Pepper
そのまま商業的な生産は行われておらず、現地で野菜として食されるのみ。
※1「ピーマン」(「Green (Bell )Pepper」)を指す語でもあるので注意。
※2「赤パプリカ」(「Red (Bell )Pepper」)を指す語でもあるので注意。
※3赤コショウがこう呼ばれる場合もあるので注意。