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バター/牛酪
Butter(英)/Beurre(仏)/Burro(伊)/Butter(独)

 動物の乳を用いて作られる食用油脂。
ヨーロッパに伝わった当初は、既に食用油としてオリーブオイルが普及していたことから、バターは野蛮人が食べるものとして食用とはされず、整髪料や医薬品、潤滑油などの用途で使われるのが主でした。
オリーブオイルに比べて保存が難しい点(後述)も、食用普及を阻んだ要因の1つとして考えられます。
それが6世紀にフランス貴族の間で食されるようになり、14世紀以降にようやく民間にも食用として普及していきます。
1,869年にはバターの安価供給を目的として、代用品となるマーガリン(Margarine)がフランス人のムーリエによって発明されました。

日本での定義
 (有塩)バター(※1)食塩不使用バター(※2)マーガリンファットスプレッド(※3)
油脂合計80%以上80%以上80%未満
うち乳脂肪100%50%未満50%未満
水分17%以下17%以下油脂と合わせて85%以上
糖類が含まれる場合は65%以上
塩分1〜2%0.13〜0.4%(※4)1〜2%1〜2%
※1単に「バター」と言った場合、日本では「無醗酵バター」、ヨーロッパでは「醗酵バター」のことを指します。
昔は生クリームへの遠心分離に時間がかかったため自然発酵していたのが、日本に伝わる頃には技術の向上で無醗酵で作られるようになったことに由来します。
現在の醗酵バターは、乳酸菌を人工的に添加して作られています。
※2以前は「無塩バター」と呼ばれていたもので、1,996/05/23の法改正により改称。
お菓子作りに用いられます。
※3「○○ソフト」の商品名で売られることが多い、低カロリーを主目的としたマーガリン。
※4牛乳に元々含まれる塩分。
「無塩」は100gあたりのナトリウムが5mg(塩分0.127%)未満と上記法改正で定められたため、以後「食塩不使用バター」と呼ばれます。

 バターは偶然できる可能性が高い食品で、その明確な起源は不明。
紀元前3,500年頃のメソポタミアの石版にそれらしい絵があるのが最古の記録で、文献では紀元前2,000年頃のインドの経典に記されているのが見つかっています。
ヨーロッパでは紀元前500年頃の黒海北部、ヘロドトス著の『歴史』に記されているのが最古とされます。


 乳脂肪分が均質化されていない乳(「ノンホモ(Non-Homogenized)」)を遠心分離すると、生クリームができます。
それをしばらく振っていると脂肪分が分離するので、これを練って水分を抜くとバターができます。
牛乳の場合、1kgのバターを作るには24リットル必要となります。
なお淡い黄色は牧草に含まれるカロテンが反映されたもので、牧草の少ない冬場は色が白くなります。このため冬場は、天然色素を添加して色を調整します。

 バターは冷蔵状態ではナイフが通りにくくなるほど硬化しますが、常温ではペースト状にまで柔らかくなり、28℃以上で融け始めます。一度融けたバターは、冷やしても元の状態には戻りません。
また紫外線にも弱いため、冷暗所での保存が必要となります。
対してマーガリンは、バターより融点が高いため常温でも傷みにくく、焦げにくいので高温での調理に向いています。