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タワーシールド
Tower Shield(英)/Pavois(仏)/Scudo Torre(伊)/Hoher Schild(独)

 首からあたりまでを覆える大盾の総称。
横から力を加えた下敷きのような湾曲した長方形型が一般的ですが、フラットであったり、カイトシールドのように下部が尖っている例もゲームなどでは見られます。

 歴史上では、ローマ帝国が帝政移行前後(紀元前27年)から3世紀末まで用いた「スクトゥム(Scutum(ラテン))」がよく知られます。
ただし「Scutum」は単に「盾」という意味で、それ以前と以後に用いられていた丸盾も同様にスクトゥムと呼ばれます。
元はギリシアの丸盾「アスピス(Aspis(希))」を真似たもので、その形状を変え、巨大化、軽量化させたものがタワーシールドのスクトゥムとなります。以後これについて説明します。

 それまでと比べ大型となったスクトゥムは、軽量化のためその素材には木が用いられるようになりました。
しかし単純な木板ではなく、蒸気で湾曲させたものであるため充分な強度を持ち、更にその湾曲構造が攻撃を受け流す効果をもたらすため、攻撃、特に当時の一般的なに対しては無敵の防御力を誇りました。
弱点となるは金属で補強されており、近接戦で破壊される心配もありません。

 ローマ兵らは、基本的に密集陣形においてこのスクトゥムを使用しました。
最前列の兵士は盾を前面に掲げて首から下を保護し、2列目以降の兵士らは盾を頭の上に乗せ、隊全体を盾で覆い被せてしまうといった具合です。状況によっては、側面や後方も覆います。
この戦法はラテン語で「亀」を意味する「テストゥド(Testudo:亀甲隊列)」と呼ばれるもので、当時の戦場においては敵なしでした。
また亀甲隊列以外では、単独で待ち伏せをする際の壁としても利用されました。

 しかしこの亀甲隊列は高い防御力を誇る代わりに動きが遅くなるため、騎兵に横や後ろを取られると一気に崩されるという欠点を持ちます。
また、後の時代の良質なには貫通させられることも多く、前述の通り3世紀末以降にはその姿を消すこととなります。
以後騎士の時代、銃の時代と続くため、同種のタワーシールドが一般に作られることは恐らくなかったものと思われます。

 しかし現代の警察や軍隊において、ライオットシールドとして同種のタワーシールドが再び採用されています。
これは古くはジュラルミン(アルミ合金)、現在はポリカーボネートで作られるもので、やはり大型である割には軽いという性質を持ちます。
ゲームなどではやそれ以上の重金属で作られている例も珍しくありませんが、そのようなものは恐らく実際には満足に扱うことはできないでしょう。