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モーセの杖/神の杖
Staff of Mose(英)/Bâton de Moïse(仏)/Bastone di Mosè(伊)/Stab des Moses(独)/Stab Moses(独)
Rod of God(英)/Staff of God(英)/Bâton de Dieu(仏)/Bastone di Dio(伊)/Stab Gottes(独)

アロンの杖/アーロンの杖
Aaron's Rod(英)/Bâton d'Aaron(仏)/Verga di Aronne(伊)/Aarons Stab(独)

(神の杖/神からの杖)
(Rods from God(英))

 モーセの杖とは『旧約聖書』の『出エジプト記』、エジプトからユダヤ人を率いた牧羊家モーセが以前から持っていたとされる牧羊杖。後半にて「神の杖」と表記されている部分があることからそちらの名でも。
王の前で蛇に姿を変えてみせた、紅海を割る際に振るわれた、岩を突いて飲み水を湧き出させたなどのエピソードを持ちます。
後年のテキストでは世界創生の6日後に作られた神の杖で、エデンの園から持ち出されて持ち主を転々とした後モーセに掘り出されたのだとも。
実物とされるそれが現在トルコのトプカプ宮殿にて保管されていますが、別に本物があるという主張も。

 対してアロンの杖が話に上るのはモーセが紅海を割ってしばらく後、終わりの見えぬ旅と食糧難で指導者モーセとその兄大司祭アロンに不満が募った折のこと。
2人が指導者であることに抗議した人々に対し、神が2人を選んだことを証明するため神の指示のもと行われた奇跡の可視化のうちの1つ。
切り分けたアーモンドの枝に12の部族の長の名をそれぞれ書かせ、翌日芽を吹いていた枝の主が真に神が定めた大司祭とその一族であるというもの。
これによりレビ族のリーダーであるアロンが改めて大司祭と認められましたがそれでもなお人々の不満は止むことはなく、しかしモーセが指導者であることの方の証明として行われた神の奇跡、不満を持つ人々らが地割れと発火によって皆殺しにされる様を目にしていた人々は、以後目に見えて反発することはなくなりました。

 また『出エジプト記』にはこれらの他に、ユダヤら人がエジプトを出る許しを得るきっかけとなった十の災いを起こす際にも杖を振るう描写が出てきます。
「モーセの指示でアロンが杖を振るった」とされますが、訳書にて「アロンの杖」と表記されているため上記どちらの杖かで議論があります。
誤訳であるという公式のコメントがあることと、上述のようにアロンの杖は旅の途中で作製しているものであるためモーセが杖を貸与したというのが一般的な見解です。
十の災いとは「川の水を血液に変え、魚を死滅させ飲み水にもできなくする」「カエルの群れを宮殿に呼び寄せる」「虫の群れを呼び寄せる」「疫病を引き起こす」「雹を降らせる」「日食を引き起こす」「エジプト中の長子を皆殺しにする」など、エジプト王家に対して行った嫌がらせの数々のこと。


 余談ですが「神の杖」というと現代ではそれとは別に、衛星軌道上から投下する宇宙兵器が挙げられます。
大気中では実現できない高速度に加速された小型推進ロケット付きの重金属の棒で狙い撃ちするというものですが、技術的条約的な問題で実現はしない見込みです。