[トップ][もどる]
真名真の名
True Name(英)/Vrai Nom(仏)/Vero Nome(伊)/Wahren Namen(独)

 その人物の本名。
文化によってはこれを呼ぶことは大変失礼なこととされ、その場合君主が中級以下の身分の者を呼んだり、父が子を叱責したり、宗教的儀式の際に用いたり、敵の名を呼ぶ際に用いたり、高僧が神の真名を口にしたりする例外を除いて、普段用いられることはありません。
これを「実名敬避俗」と呼びます。
真名はその人物の魂の名であり、これを呼ぶことは相手の魂を抜き取り支配するという考えから、これを破ることはその場での誅殺、あるいは戦争にも発展する大変なタブーです。

 真名の起源は不明ですが、ヘレニズム期(紀元前323〜紀元前30)のユダヤ教、および同時期の中国にその概念が見られます。
例えば中国の人名は「姓(名字)-(本名)-(あだ名)」で構成されており、「諸葛-亮-孔明」は「亮」が真名、「劉-備-玄徳」は「備」が真名として、これを呼ぶことは忌避されます。
日本にもこの文化は伝わっており、「清-少納言」など呼称の際に名字や官名を用いる習慣が明治に入るまで続けられました。

 西洋においてこの真名は、悪魔に知られると魂を支配され、逆に悪魔真名を知るとそれを自在に操れる性質のものとしての扱いが一般的です。
この概念が固定化されたのはルネッサンス期(14世紀〜16世紀)で、以降の民間伝承から現在の創作物に至るまで広く用いられています。