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金のりんご/黄金の林檎
Mila ton Esperidon(希)/Chrysomelia(希)/Pomum Aurantium(ラテン)
Golden Apple(英)/Pomme d'Or(仏)/Mela d'Oro(伊)/Goldener Apfel(独)

 ギリシア神話北欧神話、その他多くのおとぎ話に登場する果物。
ギリシア語の「Chrysomelia」、ラテン語の「Pomum Aurantium」はいずれも直訳すると「金色のりんご」ですが、これらは「オレンジ」を表す言葉として使われていました。
つまり少なくとも、ギリシア神話に登場する「金のりんご」はオレンジのこととなります。

 ギリシア神話の金のりんごは、ヘスペリデスの園で栽培されています。
金のりんごの樹はラドンというドラゴンが守護しており、英雄ヘラクレス(Hercules)がこれを倒して金のりんごを得る話などがあります(12の試練)。
他のおとぎ話でもドラゴンが奪った金のりんごを英雄が取り戻すというストーリーが多く見られますが、この場合のドラゴンはいずれもラドンのような善性ではなく、悪役としての位置付けが為されています。

 この他ではヘラ(Hera)、アフロディテ(Aphrodite)、アテナ(Athena)の3人の女神がこれを巡って争ったり、俊足の王女アタランテ(Atalanta)が勝負を忘れて拾いに行くなど、非常に貴重であるか、または魔法的な魅力を持っていたことが伺えます。

 北欧神話では女神イドゥン(Idunn)が栽培、保管しており、神族が食べると若返る力を持つとされます。
このイドゥンと金のりんごがロキ(Loki)のせいで巨人族に奪われてしまい、取り戻すまで神々は次第に老いていってしまうという逸話があります。
なお『ニーベルングの歌』では、イドゥンはフレイア(Freia(独)。北欧神話のフイレヤ(Freya(英)/Freija(古ノルド))に相当)に置き換えられています。


 余談ですが、イタリアではトマトのことを「Pomodoro(ポモドーロ)」と呼びます。
これは「Pomo d'Oro」が元で、それぞれPomoは「りんご(※)」、Oroは「金色」で、d'Oroが「金色の」という意味になります。
日本でトマトというと赤色をイメージしますが、昔のトマトは山吹色(一般的な柿の色)をしていたためにこう呼ばれました。
恐らくは現代英語の「Apple」と同じで、「りんご」と「果実」の使い分けが為されていなかった頃の語
(「松のりんご(Pineapple)」で「パイナップル」を表現する感覚で、「金色のりんご」で「トマト」を表現)。
現代では通常「りんご」というと「Mela」を用いるのが一般的。