[トップ][もどる]
羊皮紙/皮紙/獣皮紙
Parchment(英)/Parchemin(仏)/Pergamena(伊)/Pergament(独)/Pergamenum(ラテン)
Vellum(英)/Vélin(仏)/Vellum(伊)/Vellum(独)/Vitulus(ラテン)

 動物の皮を加工して作られた記述用媒体
現在の普通紙に比べやや厚手(0.15mm〜0.3mm)で、表面は若干ざらついています。画用紙ぐらいの薄さの太鼓の皮だと思ってください。
インクが染み込みにくいため滲みがほとんどなく、表面さえ削れば再利用することができます。
状態によっては、削る前の文字を判読することもできます。

 汚れを落とした皮を消石灰水槽に漬けて油分等を落とし、その後木枠にピンと張った状態で表面をナイフで削ぎ落としていきます(下表参照)。
仕上げに石膏(硫酸カルシウム)の粉を振って軽石で磨き、長方形に裁断すれば完成です。
なお漬け込みや乾燥に時間を要するため、1枚作成するのに1ヶ月前後を要します。
部位処理
表皮毛の生えている面。削ぎ落とす。

乳頭層茶色い層。裏面しか使わない(巻物用)なら残す。
網状層白い層。残す。
皮下組織肉に接している面。削ぎ落とす。

 羊皮紙は紀元前200年頃のペルガモン(Pergamum、現在のトルコ)で生まれ、「Parchment」の語源にもなっています。
大図書館が建造された折にパピルスの一大産地であったエジプトと不仲であったため、それまであった筆記用の獣皮を発展させ、両面とも利用でき、冊子(本)として加工できるものとしました。
なお獣皮を記述用媒体とする文化自体は、紀元前2,500年頃のエジプトでの使用が最古の記録と見られています。

 その後15世紀に安価な植物製紙が普及し、貴族や芸術家などの一部の層を除いて、羊皮紙の利用は減少していきました。
ですが植物製紙と比べて1,000年以上の保存に耐える羊皮紙は、今日でも政治的、歴史的な用途などで用いられ続けています。
また、その独特の風合いを好む声も多く、羊皮紙に似せて作られた安価な植物製紙も市販されています(本物を購入する際は間違えないように注意)。

 皮はイギリスとフランスでは羊と仔牛、イタリアではヤギが主に使用されました。
羊は日焼けしたような独特の風合いを持ち、ヤギは白い代わりに毛穴が目立ちます。
仔牛の羊皮紙は薄く手触りの良い高級品で、「Vellum」と呼ばれます。これはラテン語で「雄の仔牛」を意味する「Vitulus」に由来します。
ベラムの中でも特に牛の胎児の皮を用いたものが最高級とされますが、これが実際に中世で用いられたかは不明です。