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暗殺者/アサシン
Assassin(英)/Assassin(仏)/Assassino(伊男)/Assassina(伊女)/Assassine(独)

 現在の定義では、金銭で雇われた殺人者を指す言葉。
暗殺行為そのものは紀元前から世界各地で行われてきましたが、現在あるイメージの祖となったのはイスラム教ニザール派による暗殺行為と、「山の老人」伝説より。

 ニザール派とはイスラム教シーア派の一派、イスマーイール派の更に分派で、11世紀末から13世紀半ばまでシリア、イランを中心に山城を保有した独立政権。
主に十字軍(1,096〜1,272)の要人に対し暗殺行為を行っていたことで知られます。
彼らは暗殺を行う専門の人間を育成しており、教育された彼らは高い暗殺技能と妄信的自己犠牲心、そして敵地で単独行動できるだけの高い知能を備えていたことが知られています。

 「山の老人」とはマルコポーロ著『東方見聞録』(1,298)に登場する、ペルシアの山中に秘密の園を持つ老人の話。
老人は大麻をエサに「これをもう一度吸いたかったら使命(暗殺を含む謀略の数々)を果たせ」と若者をそそのかしたといいます。

 ニザール派が当時「Ḥashīshī(※)」と呼ばれていたこと、アラビア語で「大麻を吸う者」を「Ḥashshāsh(※)」と呼ぶこと、ニザール派が山に城砦を構えていたこと、山の老人が山中に住まっていたことなどからこれらの話が混同され、ニザール派は「大麻統制されていた暗殺教団」として語られるようになっていきます。
この「Ḥashīshī(※)」および「Ḥashshāsh(※)」が、「Assassin」の語源となっています。
 なお後の研究ではニザール派が大麻を吸引していたという事実は確認されず、その上で「Ḥashīshī(※)」はスンニ派がシリア・ニザール派を指す際に用いた何らかの意味を持つ蔑称であったと考えられています。
「Ḥ」は「H」の下に「.」

 暗殺は圧倒的不利な状況下でも戦況を覆すことが可能であり、かつ標的となる人物以外、特に無関係な民衆を巻き込まないという点で理想的な戦争の手段でした。
現在では要人のガードが固いために組織だって行わないと難しいということもあり、暗殺稼業は主に一般人同士の怨恨を晴らす手段として用いられます。