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ミスティルテイン
Mistilteinn(古ノルド)/Misteltein(ノルウェー)/Mistelten(スウェーデン)/Mystletainn

 北欧神話において、ミスティルテインと呼ばれるアイテムは2通り存在します。

 光神バルドルに死の予言が下され、これに対し母フリッグは、世界中のあらゆるものに、息子バルドルを傷つけないという誓約を取り付けます。
しかしまだ幼かったヤドリギとだけは誓約を交わせず、変装したロキにそのことを漏らしてしまいます。
そしてロキはバルドルの兄弟である盲目のホズを騙して、ヤドリギの枝をバルドルに射掛けるように仕向けます。
こうしてバルドルは命を落としてしまい、これが元でラグナロクへと発展してしまいました。

 ちなみに「Mistil」は「ヤドリギ」、「Teinn」は「」または「小枝」の意味で、「Mistilteinn」はそのままヤドリギを指す言葉となります。
ヤドリギは樹木の枝に根ざす植物で、そのため通常の枝よりも遥かに細く、一節は一回り小さくした竹とんぼといった程度しかありません。
なのでとても矢の代わりに用いられるようなものではないのですが、この辺りは矢や、あるいは剣に変化したなどとする解釈もあります。

 なおヤドリギは古くアイルランドや北欧において、魔力を持つ貴重な樹として、ワンドの材料にされたりもしました。


 もう1つのミスティルテインは、『フロームンド・グリプスソンのサガ』という物語の中で、剣として登場するものです。
英雄フロームンドが墓所の中で王の亡霊と戦って手に入れたもので、ハッディンギャルの勇士ヘルギとの戦いや、420人の戦士を斬った逸話などが語られています。

 このサガは12世紀初頭にロルフという農民が結婚式用に書いたもので、現在では19世紀末に書かれた写本を残して原典は失われています。
原典の時点で「Teinn(杖)」がついていたかどうかは分かりませんが、いずれにせよこれは銘が「ヤドリギ」というだけの、ただの名剣と見て良いでしょう。