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ミイラ/マミー
Mummy(英)/Momie(仏)/Mummia(伊)/Mumie(独)/木乃伊(中)/Caf(エジプト)

 古代エジプトを有名どころとする、乾燥タイプの長期保存死体。
急激な乾燥を施すことにより細菌類の繁殖を抑え、肉と皮を残した状態での長期保存を可能としたもので、要するに干物(正確には乾物)やドライフラワーのようなもの。
一般的には人間のものを想像しがちですが、実際にはそれ以外の動物でも作られていました。

 作成にあたっては内臓が最も腐敗しやすいため、まずはこれらを一旦取り出して乾燥した後、再び体内に戻します。
ただし脱水症状で死亡した場合はこの作業を必要としないため、例えば砂漠での行き倒れの場合などには天然(?)のミイラが作られることとなります。
 なおエジプトの例では、乾燥薬液での防腐処理後に包帯を巻いて完成としていました。
ミイラが幾重の包帯を巻かれた姿でイメージされるのはこのためです。

 ミイラは当初エジプトではサフ(サァエフ/カフ)と呼ばれていました。
これは「高貴なものに転じる」という辺りの意味で、ミイラ化作業によって魂を高い位置に昇華させるという意味合いが込められています。
 それがマミーと呼ばれるようになったのは12世紀以降、アラビアの万能薬ムミヤ(Mumiyyah/Mumiya/Mummia)=タール(アスファルト)がヨーロッパ圏に持ち込まれたことによります。
このムミヤと、ミイラの防腐剤としてタールが使われていたこと(本来は天然樹脂。時代時代により他にも様々な防腐剤あり)とが混同され、煎じたミイラがそれであると誤解されました。
このことにより、「乾燥死体の薬=ムミヤ」となり、いつしか乾燥死体そのものがこの名で認識されるようになっていきました。

 日本語のミイラも、オランダ語のそれ、モミイ(Mummie)から来ているとされています。
一般にはミイラの語源として、同じく防腐剤として使用されたミルラ(Myrrh)であるという説が広く信じられていますが、当時の書物でも乾燥死体のことをモミイと言うことが紹介されており、逆に乾燥死体をミルラと呼ぶことの結びつきは確認できません。
なお漢字表記の「木乃伊」ですが、これは中国語をそのまま流用したものです。

 創作物でのミイラの扱いは概ねゾンビと同程度で、これに呪いや病気などの特殊能力が付随していることが多いようです。
これは、ピラミッドの調査員らが謎の死を遂げた事件や、不正に作成されたムミヤによって疫病蔓延したことなどが根底にあると思われます。