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蒸留酒/火酒
(Hard )Liquor(英)/Spirit(英)/Boisson Spiritueuse(仏)/Distillato(伊)/Spirituose(独)

 蒸留によって高いアルコール度数を実現した酒類。およびその加水物。
通常の酒類は糖類を酵母で発酵させることによって作られますが、その場合度数が高くなることによって酵母がアルコール殺菌されてしまうため20%までしか度数を高めることができません。
このアルコールを蒸留、すなわち沸点の違いを利用して水分と分離したものが蒸留酒であり、原始的かつ一般的な方法で96%(※)までのアルコールを得られます。
他のものが混じると本来の沸点とは異なってくる「共沸」という現象があるため。
より以上の度数のものを得ようとした場合は工業的な手法が必要になってきます。

 蒸留の技術そのものは紀元前1,200年のアッシリア(現イラク)にはあったと見られますが、蒸留した酒が作られていたとされる信頼できる証拠は9世紀の同イラクより。
その間の期間にも作成、飲用されていた可能性は大いにありますが、2,018年現在でまだ明確に断言できる状況証拠はないようです。

主な蒸留酒とその特徴
名称主な材料特徴概要
Aqua Vitae(ラテン)ブドウ酒蒸留果実酒「命の水」の意。=ブランデー。
文献に残る最古は1,386年で、これがイタリアから各地に広まりブランデー、ウイスキー、ウォッカの元に。
 ブランデー
 Brandewijn(オランダ)
果実酒「焼いたワイン」を意味し、ワイン(ブドウ酒)やその他の果実を蒸留して作られる。
大々的に生産が始まったのは15世紀のフランスで、元々の起源はスペインとも。
  コニャック
  Cognac(仏)
白ブドウフランス、シャラント県コニャックのブランデー。
  アルマニャック
  Armagnac(仏)
フランス、アルマニャック地方のブランデー。
  カルヴァドス
  Calvados(仏)
リンゴ
/洋ナシ
フランス、ノルマンディー地方のブランデー。
 ウイスキー
 Whisky(スコットランド英)
 Whiskey(アイルランド英)
麦類
/トウモロコシ
木樽で熟成Aqua Vitae」のゲール語訳「Uisce Beatha」が略されたもの。
ゲール語圏(スコットランド/アイルランド)の蒸留酒で、木樽で熟成させて風味をつける。
現在は世界各地で作られており、「産地名+ウイスキー」で呼ばれるものが多い。
  バーボン
  Bourbon( Whiskey)(英)
トウモロコシケンタッキー州バーボン郡のアメリカン・ウイスキー。
トウモロコシを50〜79.99%使用し、オーク樽で2年以上熟成させたもの。
 ウォッカ
 водка(ロシア)
麦類/芋類
/果物/甜菜
≒エタノール濾過と蒸留を繰り返したほぼ純粋なエタノール+水。
フレーバーを添加したものを除き、ほぼ無味無臭で癖がない。
  スピリタス
  Spirytus(ポーランド)
ジャガイモ
/麦類
ポーランドのウォッカ。語の意味は単に「エタノール」。
工業用を除いては世界最高の度数(96%)を誇る。
ジン
Gin(英)
麦類
/ジャガイモ
薬用酒1,660年に解熱・利尿用の薬用酒としてオランダで作られた蒸留酒。
ジュニパーベリーを始めとする薬草で香り付けが為されている点でウォッカと異なる。
元々の名称はこのジュニパーベリーを由来とする「Jenever」で、1,689年にイギリスに伝えられた際に省略されて「Gin」に。
香草や柑橘類の皮で風味づけされた炭酸水、トニックウォーターで割った「ジン・トニック」などが知られる。
ラム
Rum(英)
サトウキビ蒸留
サトウキビ酒
1,492年にクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸への航路を発見したことでその後カリブ海にサトウキビが持ち込まれ、その絞りかす(糖蜜)を用いて作られるようになった蒸留酒。
語源は諸説あるが、文献に残る語の最古はイギリスのもの。
製造時は80%程度で、これを40〜50%程度にして販売するのが一般的。
現在は絞りかすではなく絞り汁で作られたものもあり、これもラムの一種とされる。
 焼酎甲類(旧)
 連続式蒸留焼酎(新)
 ホワイトリカー(俗)
サトウキビ
酒粕
焼酎と呼ばれるものの、酒粕を使う点以外はほぼラムと同種のもの。
ただし日本の酒税法の都合上、36%未満での販売が義務づけられる。
 黒糖焼酎サトウキビ
/米麹
サトウキビの絞り汁を用いたもので、焼酎乙類に分類されるが酒税法上は「ラム」とされる。
実際、元は別の酒とされていたのが、米麹を使用することを条件として焼酎と同じ低税率を適用されたもの。
焼酎乙類(旧)
単式蒸留焼酎(新)
(本格)焼酎(※)
禾穀類
/イモ類
種実類
何でもあり最古の記録では1,559年で作られていたことが確認できる、日本の蒸留酒。
本来焼酎といえばこちらで、酒税法上45%以下での販売が義務づけられる。
材料のバリエーションが多く、それぞれの風味が残っていることが特徴。
 泡盛米焼酎米を用いた沖縄の焼酎。一般的な乙類焼酎とは製法が異なるが乙類に分類される。
古くは単に焼酎と呼ばれていたが、1,671年徳川家に献上する際に本土のものと区別のために呼称が設けられた節が文献に見られる。
メスカル
Mezcal(スペイン)
リュウゼツラン蒸留リュウ
ゼツラン酒
スペインのコンキスタドール(Conquistador、大陸征服者、冒険家)がメキシコで酒を現地調達するために作られたもの。
リュウゼツランは自身でデンプンの糖化を行う植物のため都合が良かった。
 テキーラ
 Tequila(スペイン)
200以上あるリュウゼツランの特定の品種で作ったメスカル。
通常「甲>乙>丙」の序列で用いられる語であるため、焼酎乙類では焼酎甲類より下という印象を受ける。
そのため1,971年に「本格焼酎」の呼称を用いることが法で認められた。